ゴールデンウィークも終わりましたが、今年は新型コロナ肺炎ウィルスの影響もあって、どこにも行けず家で過ごす日々。GWはゴールデンウィークならぬ我慢ウィークでした。
それどころか、私も例にもれず4月から在宅勤務(テレワーク)で、平日の日中は狭い自室に籠ってほぼ1日を過ごす日々です。

朝早く起きて、小一時間満員電車に詰め込まれて、オフィスで仕事して、どっぷり疲れたところで再び満員電車に小一時間ほど揺られる生活に比べると、通勤がカットできる分だけ多少は身体的な負担は少なくなったかなとも思っています。通勤時間の分だけ遅くまで寝てられるのはデカい!

身体的負担が減ったので、仕事に集中して取り組める...かと思ったら、なかなかうまくいかない。正確には集中力が持続しない。
いや、自室には様々な誘惑があることは百も承知だし、子供たちも自宅待機でずっと家に居るので気にはなるものの、それにしたって、なんかこう注意力が散漫であったり、あげく眠くなったり...

やはり「見られている」という周囲の目は大事なんだな、と、中高一貫の女子高に進学した愛娘の身を軽く案じつつ、仕事の調べ物をしていた過程で、こんな論文を発見。

  • 一般的に、二酸化炭素濃度が1,000ppmを超えると眠気などを誘発すると言われている。
  • 眠気の誘発は、モチベーションの低下に繋がる。
  • 厚生労働省の二酸化炭素濃度の基準は1,000ppmである。

厚労省が室内の二酸化炭素濃度の基準値を定めているんですね。初耳でしたが、労働環境が劣悪だと仕事どころか健康を害するのでその辺のレギュレーションは必要だなと納得。
炭鉱やトンネル工事といった閉鎖空間での仕事もあるしね。

で、肝はこの論文のabstractに記載されている通り「二酸化炭素濃度が眠気を誘発する」という部分。
ほうほう。二酸化炭素濃度か。きっと在宅ワークが捗らないのはこのせいだな?(確証バイアス)

ということで、今回のお題は、身近にありながらも普段は意識することのない二酸化炭素のお話です。
例によって400字で済む話を、無駄知識への誘いの名のもとに13,000字でたっぷりお伝えします。

ご無沙汰でした。それでは始めましょう。

CO2濃度の基準値とは?

先ほど少し述べたように、居室内の二酸化炭素濃度については厚生労働省がひとつの基準を設けています。
2秒ほどググってみたところ、速攻で以下のページがヒット。

「建築物環境衛生管理基準」というレギュレーションがそれのようですね。
この基準の対象になるのは、「特定建築物」という分類の建物。これは3,000m2以上の面積を持つ建築物。いわゆるオフィスビルだけでなく、学校や旅館、図書館、店舗など、大雑把に言うと「大きな建物」です。
ちなみに学校の場合は床面積8,000m2以上がこの対象になるそうです。

この管理基準の中に、空気環境の基準も設けられていまして、それは以下の通り。

ア 浮遊粉じんの量 0.15 mg/m3以下
イ 一酸化炭素の含有率 100万分の10以下(=10 ppm以下)
※特例として外気がすでに10ppm以上ある場合には20ppm以下
ウ 二酸化炭素の含有率 100万分の1000以下(=1000 ppm以下)
エ 温度 (1) 17℃以上28℃以下
(2) 居室における温度を外気の温度より低くする場合は、その差を著しくしないこと。
オ 相対湿度 40%以上70%以下
カ 気流 0.5 m/秒以下
キ ホルムアルデヒドの量 0.1 mg/m3以下(=0.08 ppm以下)

二酸化炭素濃度だけでなく、温度湿度や気流まで規定があるんですね。
これら空気環境に関しては、ホルムアルデヒド量を除いては2か月に一度計測して、規定値内にあることを確認する必要があるようです。
(ホルムアルデヒド量は、新築・改築・修理・模様替え等を行った後に一度測ればよいらしい)

ということは、多くの人が働く、そこそこ大きなオフィスビルに関しては二酸化炭素濃度が1,000ppm以下になるよう管理されているのですね。
なるほど。仕事も捗るわけです(適当)。
ちなみに、100万分の1000ってのはパーセント換算だと0.1%ね

ところでこの1,000ppmという基準値、なぜ500でも2,000でもなく1,000なのでしょうね?
早速調べて...

....すげえな。

で、導きに従ってググってみましたところ、まさにドンピシャな以下の資料を発見。

いや本当、便利な世の中になったものです...

ありがたく中身を読み進めていきますと、以下のようなことが書いてありました。

  • 1,000ppmを超えると倦怠感、頭痛、耳鳴り、息苦しさ等の症状を訴えるものが多くなり、疲労度の向上も著しいこと等により定められた。
    ※1971年のビル管理講習会テキストからの引用として記載
  • 1,000ppmのCO2吸入実験(Eliseeva 1964)で呼吸、循環器系、大脳の電気活動に変化がみられたと報告
  • 700~1,000ppmを炭酸ガスの許容濃度とみなすと提言(Pettenkofer 1881)。この数値に生理学的基礎はないが、家庭内の空気汚染の間接的な指標として実際的な数値である。
    ※上記2点は1968年のWHO報告書からの引用として記載
  • 諸外国におけるCO2室内濃度の指針値も概ね1,000ppm。
  • 2008年にドイツ連邦環境庁が提示した評価は、1,000ppmが「無害」、1,000~2,000ppmが「有害性が上昇する」、2,000ppm以上が「許容できない」というもの。

1881年って明治14年。板垣退助が自由党を結成したり、エジソンが白熱電球の特許を取ったあたりですが、この頃から既に1,000ppmあたりがいい塩梅なんじゃないのって認識があった模様。

いやー結構いいところまで行ってるんですが、1,000ppmを超えると人の思考だとか行動に対して具体的にどう影響を与えるとかの、なんというかより身に迫る根拠やら実験結果が欲しいところですね。設定したのは何かしらの明白な理由があるはずですし。

すべての決まり事には、すべからく理由があるべきです。
その理由を探す旅に出ましょう。

ダイヤルE(Evidence)を廻せ!

何かあるだろう!と思って再びGoogleやらCiNiiやらPubMedやらを嗅ぎまわってみたら、割と最近行われた研究を発見。

2012年にアメリカのローレンス・バークレー国立研究所から発表されたものです。
実験内容を抄訳すると以下のような感じ。

  • 600、1,000、および2,500 ppmの3つの濃度で、CO2が思考能力に与える影響を調査。
  • 24人の参加者(主に大学生)を4人のグループに分け、上記3つのCO2濃度条件の部屋に各2.5時間ぶち込む。
  • その間、最初の1時間はアンケートに答えたり等の様々な活動に従事し、残りの1.5時間で意思決定のパフォーマンスを評価するテストを受ける。

おお、なんだか本格的な実験ですね(当たり前だ)。

結果はどうだったか?
くどくど文章で書くより一発でわかるグラフがあるので、それを引用します。

横軸は左から、
 ①基本的行動力
 ②応用的行動力
 ③集中力
 ④課題解決力
 ⑤積極性
 ⑥情報収集能力
 ⑦情報活用能力
 ⑧柔軟な思考能力
 ⑨基本的戦略力
という能力分類。
なんだかとっても人事評価っぽい分類で、この項目名だけで、おじさん若干過呼吸気味ですが...

縦軸は、600ppm/1,000ppm/2,500ppmのぞれぞれの環境下における各能力のパフォーマンス。上に行くほど高成績。

これを見ると、600ppmを基準として考えると、1,000ppmはまぁ許容範囲、2,500ppmになると酷いものでは半分以下のパフォーマンスしか発揮できていないことになりますね。すげえ。

意外だったのは集中力と情報収集能力で、これは今回試したCO2濃度の範囲では影響を受けてない結果に。何でもかんでも高濃度CO2の影響を受けるわけではなさそうなのが意外。

全体をざっと見てみると、何か頭を使って考える系の能力は軒並みダメな感じっぽいですね。疲れて頭がぼーっとしてくると、そういう重めのことは本当に「めんどくせえ」し、ましてや自発的に何かするのは本当に面倒くさくて、youtubeのおすすめプレイリストをただボーっと見て時を過ごすという受動的な活動に堕ちてしまっちゃうので、この結果には納得です。

そう考えると、例外の二つは、それほど思考を必要としない単純作業に近いテスト内容だったのかな?だとするとこの結果も納得がいきます。
間違い探しとか、鉛筆を1ダース単位で箱詰めするような、集中は必要だけどそんなに頭使わない作業は、多少ダルくとも何かできそうな気がしますし。

もっと何かないかなと探ってみたところ、2018年8月に日本で発表された論文がヒット。
ほーら、あるじゃーん。あるじゃーん。

序文を抜粋して引用。

     CO2は知覚しない気体ではあるが、高濃度のCO2が人体に影響を及ぼすと考えられており、人体に影響を及ぼさない程度のCO2濃度であっても、生産効率や学習効率などに影響を及ぼす可能性がある。

     しかし、建築環境という面から、室内のCO2濃度と執務者の知的生産性との関連性に着目した研究は少ない。

     そこで本研究では、室内CO2濃度が定常になった状況を想定し、執務者の作業量と生理心理量を同時に測定する実験室実験を行った。その結果からCO2濃度が作業性と生理心理量に及ぼす影響を検証することを目的としている。

そうそう。こういうのこういうの。

さっそく読んでみますと、実験の内容は以下のようなもの。

  • テストケースは、①600ppm、②1,500ppm、③3,500ppmのそれぞれにコントロールされた環境、④600ppm+マスク着用の環境、⑤600ppm+温度27度の環境、⑥600→1,500ppmに増加していく環境、⑦600→3,500ppmに増加していく環境の7ケース。
  • 実験は各々1時間45分。最初の30分は環境順応のため安静にし、次の60分でタイピングを行い、最後の15分もまた安静にする。
  • CO2濃度が増えていく環境では、最初の30分は同じく順応期間。ここで徐々に濃度を上げ、次の30分でタイピング、その次の30分でCO2濃度を元に戻していくという実験手順。
  • 被験者には各ポイントで血圧・脈拍・唾液アミラーゼ測定と、肉体的心理的状態に対するアンケートを実施。

実験ケースをまとめた表は以下の通り。

あっ、良い。良いですよこれ。
特にマスク装着時のテストを行っているのと、温度の影響も見ているのが大変よいです。

アンケート項目はこれ。

いやーもうたまりません。
読み進めていくと、実に興味深い実験結果が記されていました。

要約すると。

  • アンケートはタイピング作業の前後で実施
  • 眠気感は3,500ppm環境と、マスク装着の環境で表れていた
  • 倦怠感はマスク装着の環境と、600→1,500ppm、600→3,500ppm環境で表れていた
  • 集中度は3,500ppm環境、600→1,500ppm環境、マスク装着環境、600→3,500pp環境の順で悪化
  • タイピング作業による作業効率はCO2濃度の上昇に伴い減少傾向にある
  • 誤入力率もCO2濃度の上昇に伴い増加傾向
  • 温度の違いによる影響は観察されなかった

結果をまとめたグラフも以下に引用します。
Case6が600→1,500ppm、Case7が600→3,500ppm環境ね。

マスクやべえな!という感想と、同じ1,500ppmや3,500ppmでも、ずっと同じ濃度の環境にいるよりも、徐々に上がっていく環境に身を置いていたほうが眠気度・倦怠感・集中度に悪影響を及ぼすっぽいんだへぇ~ってことが分かりました。

「徐々にCO2濃度が上がっていく環境」というのは、まさに人間が換気の悪い部屋にいる時の状況。
しかもこの1,500ppmや3,500ppmというのは、「1人在室30~60分経過で呼気周辺約1,200~1,500ppm、密閉された会議室に大勢在室30分~60分経過で3,500ppm以上の定常状態になる状況を想定とした」とのこと。割とリアルな値のようです。

またマスクに関しては、計算により5,000ppmもの高濃度CO2を吸気していたと想定されるとのこと。5,000ppmて...花粉症でマスク手放せない人は、花粉症やその薬の影響で頭ぼーっとするのに加えて、高濃度CO2の影響も加算されるダブルパンチ状態ってことかぁ。

労働安全衛生法の事務所衛生基準規則によると、1日8時間労働における労働衛生上の許容限度が5,000ppmらしいので、まぁギリOKと言えなくもないですが、パフォーマンスはガタ落ちでしょうね。大変だ。

このように、先人たちのありがたい実験結果により、CO2が、どのあたりから人間の思考力や作業能力・精神状態にどんな影響を与えるかが分かってきましたね。

そして1,000ppmという目安が、「んー、こんな感じ?」というフィーリングベースのものではなく、意味のある値であったことも分かりました。

さて次はそれを我が身に当てはめてみましょう。
お待たせしました。実測です。

CO2センサーを探せ!

諸君、私はセンサーが大好きだ。

温度計が好きだ
湿度計が好きだ
照度計が好きだ
気圧計が好きだ
傾きセンサーが好きだ
地磁気センサーが好きだ
ノックセンサーが好きだ

地上で
地下で
上空で
海上で
水中で
密閉空間で
移動空間で

この地球上で行われる、ありとあらゆる自然現象を見るのが大好きだ

更なる好奇心の探求を望むか?

よろしい ならば計測だ

けどねぇ。CO2センサーって結構するのよねぇ。
前回の気圧センサーのときと同じく、スマートフォンに乗ってればいいんだけど、そんなもんは無いし。
アナログな針で表示されるのではなくてデジタルに値を計測・記録したいし。

この手の計測器といえば、おんどとりでお馴染みT&Dさんですが、

いやーちょっと知的好奇心のために\54,780はきっついっすわぁ。

もっとなんかこうお手軽なものはないかなと思ってググってみたところ、ハイテク農家さんたちの間で人気のセンサーがあるとのこと。もちろんデジタルデータとして値を取得可能なやつです。

それそれ。レッツアマゾン!

うぉっ!センサーモジュールかぁ...これはがっつりとプログラミングやらケース収納やらが必要なやつですな...いささかハードル高い。

とはいえ、単体で計測できて、しかもPCに接続できてログを取ることができる二酸化炭素センサーなんて、それこそT&Dのあれぐらいしか見当たらず。

こりゃ企画倒れかなぁと思いつつも未練たらしく調べていたところ、なーんと、海の向こうには丁度いいものがあるじゃ、あ~りませんか!
その名もCO2Mini !

単体で動作し、価格も、まぁ出せなくもない値段。
なんといっても!

よし、これにしよう!
ごめんクサイ!と注文しようとしたところで...あれ、これどっかで見たことあるぞ?

なんと、現場を支えるネットストア「モノタロウ」のオリジナルブランド品としてこれが売ってました。

ただ、非ッ常~に気になるのが、説明文のどこにもデータロガーソフトについて書いてないこと。
USBポートについては、電源供給用としか書いてない。
もしかして、モノタロウへのOEM提供に伴って、PCとの接続機能がオミットされてたりするのでは....

悩んでてもしゃーない。数字はデジタルに出るし、最悪、手ロギングでもよかろうと腹をくくり、モノタロウでポチっとな!

ウェッルカーム!

そして気になるUSB経由でのロギング機能は?
いざ接続!

お?

なんかドライバ当たったぞ!

では、例のロギングソフトを起動してみると...

やったぜ!

試運転

新しいおもちゃが届いたので、さっそく遊んでみるのです。
身近なところで二酸化炭素濃度を意識するものとしては、冬季の暖房環境ですかね。

特に火を使うもの、ガスファンヒーターや石油ファンヒーター、石油ストーブなんかだと、換気しなさいって口酸っぱく言われますし、ファンヒーターには本体にもセンサーがついてたりしますね。

さっそく、石油ファンヒーターを使って暖房を利かせつつ、CO2濃度を測ってみることにしましょう。

グラフ中央、14:30から石油ファンヒーターをON。
ONする前の室内CO2濃度は約750ppmでしたが、ONにしたとたんに急上昇。約5分で1,500ppmを超えました。室内温度はたいして上がってないのに...

で、15分後のグラフはこちら。

笑っちゃうほどの急上昇っぷり!2,800ppm超えです。
なお室内温度は2度上がりました。

石油ファンヒーターの二酸化炭素濃度向上力高ぇ~。って関心するとともに、ロギング機能がオミットされていないことに安心。よかった!

ですが手放しで喜んではいられない驚愕の事実。
なんとこのロガー、データを保存しようとすると....

うぁぁぁ~違うぅぅ~グラフが欲しいんじゃないのぉぉぉぉ~!
生データが欲しいのぉぉぉ~!

と思ったら、実行ファイルのサブディレクトリに、CSVファイルが作成されていました。よかったー!っていうかメニューに出してよそれ!

これで、PCを起動して、このロギングソフトを起動している間はログを採取することができます。
計測したログは、このソフトの"Cumulative Time Graph"タブの画面で、日付や時刻を指定して見ることができます(見るだけならセンサーをUSB接続しなくてもソフトは起動できる)。
また、上記のように保存されているCSVファイルをExcelか何かに食わせてグラフを描くこともできますね!

よろしい、ならば計測だ。

※おことわり※

この記事の公開は2020年5月ですが、CO2センサーの購入自体は2016年に、ログの取得はそれ以降断続的に行ってきたものを使用しています。記事に関しても、当時書きかけで没っておいたテキストを再編集したうえで今回の記事としています。
そのため、春なのに暖房器具とか、緊急事態宣言下なのに満員電車やら通勤時のログだとか、スクリーンショットの端々に古い日付が表示されていたり等していますが、上記の理由によるものです。何卒ご了承ください。

さっそく計測してみましょう。
まずは、先ほど少し触れた暖房器具の影響の続きを見てみましょうか。

さらに石油ファンヒーターをONにし続けると、どこまで行くでしょうか....?

あれ?2,900ppmで上限張り付き?

保存されているCSVファイルを見ても、2,901ppmがずら~っと並んでいるので、グラフ表示の問題ではなさそう。

製品仕様かな?日本国内におけるOEM先の製品サイト(株式会社カスタムのCO2-Miniのサイト)に行って仕様を見てみると...

測定範囲0~3,000ppmかぁ...ま、十分十分!。

気を取り直して、しばらく家の中の様子をモニタリングしてみました。

これは3月の、ある平日における居室内の1日のグラフ。
築25年の木造家屋、部屋の広さは7.5畳です。
建築時期的に24時間換気などはなく(2003年から義務化)、換気は部屋の窓や扉とすきま風に頼る、ひと昔の家です。
この部屋、夜間は私の寝室として使用しています。

左から、人(おとな1名)が部屋に入って扉を閉め、睡眠をはじめると二酸化炭素濃度は上昇。朝7時の起床時点では1,715ppmでした。6時間で1,000ppm近くの上昇ですね。

その後人の出入り(扉の開け閉め)で少しだけ下がり、あとはすきま風換気でなだらかに下降。
午前10時ぐらいにちょっと盛り上がってるのは、家人が掃除などで一時的に部屋に入ったからでしょう。

その後は無人状態を維持し続けたので濃度は下降。17時過ぎにまた山ができているのは、家人が帰宅して一時的にこの部屋に居たからでしょうかね。濃度上昇が急ですが、温度の上昇が無いことから、暖房器具を使ったわけではなく、単純にこの部屋に人がいて活動していたことが伺えます。
洗濯物でも畳んでいたのかな?

以後は再び無人となり、二酸化炭素の排出がなくなったので濃度は下降。外気の二酸化炭素濃度である400ppm付近に収束する動きを見せています。

これを見て分かったのが、人間が一人いるだけでも二酸化炭素濃度は結構短時間のうちに上がるんだなってこと。
また、睡眠中の濃度上昇は(スタート時点が850ppmと少し高めだったとはいえ)6時間で1,000ppm程度弱と、意外と少ないんだなということでした。

睡眠中は人体の活動が低く抑えられているから、少ない二酸化炭素排出量で収まったのでしょうかね。なかなかに興味深い結果です。

なお、24時間換気が義務付けられた2003年以降の新築物件においては、1時間で部屋全体の空気の半分以上が入れ替わっていることが求められているので、今回の計測結果とは「良い方向に」違った結果になると思います。

私が実験するには、24時間換気システムのある家に引っ越す or 建て替える必要があるんで...ちょっと今は厳しいっすね。どなたか追試願いたいです!

この支配からの卒業

さて、ひとつ試すとちょっと面白くなってきました。
時間と場所、条件を変えて、あっちこっちのCO2濃度を計測しまくっています。

が、しばらくはノートパソコンにこいつをぶっ挿してCO2濃度を測っていたのですが、上限値が3,000ppmということよりも、ログ残すのにノートパソコンが必要なのが大変邪魔くさいことに気が付きました。

ひょっと持って行ってサッとログ取ることができないか、ちょっと調べてみたところ、このUSB通信プロトコルがOEM元サイトで公開されているのを発見。

この世は広い。同じことを考えている人はいるはず!

Reverse-Engineering a low-cost USB CO2 monitor

ほらね!

このサイト見て初めて知ったのですが、公開されているCO2MiniのUSBプロトコルだけでは全然だめで、中に流れているデータは何かしらの暗号化?的な処理が入っているらしく。
上記サイトでは、ロギングソフトをリバースエンジニアリングして、そのデータ処理を解き明かしつつ、最終的にはPythonスクリプトを作っていました。すっげえ!

そこで公開されていたスクリプトをもとに、Perlでスクリプトを作ってみました。

これを手持ちのRaspberry piに仕込んで、CO2MiniがUSBポートに接続されたら自動的に起動、syslogに吐き出すように仕立ててみました。簡単お手軽かつどこでもログ取りができますね。満足。

出力結果はこんな感じです。15秒間隔でsyslogに吐き出します。

Apr 30 19:26:24 raspberrypi co2mini.pl[857]: Co2 = 654 ppm, Temp = 23.29 degC
Apr 30 19:26:39 raspberrypi co2mini.pl[857]: Co2 = 652 ppm, Temp = 23.29 degC
Apr 30 19:26:54 raspberrypi co2mini.pl[857]: Co2 = 651 ppm, Temp = 23.29 degC
Apr 30 19:27:09 raspberrypi co2mini.pl[857]: Co2 = 650 ppm, Temp = 23.29 degC
Apr 30 19:27:24 raspberrypi co2mini.pl[857]: Co2 = 651 ppm, Temp = 23.29 degC
Apr 30 19:27:39 raspberrypi co2mini.pl[857]: Co2 = 651 ppm, Temp = 23.29 degC
Apr 30 19:27:54 raspberrypi co2mini.pl[857]: Co2 = 651 ppm, Temp = 23.29 degC
Apr 30 19:28:09 raspberrypi co2mini.pl[857]: Co2 = 651 ppm, Temp = 23.29 degC

詳しい仕組みを知りたい人向けには別ページを作ったので、そっちを参照ください。

これで、こんなシステムで計測が可能になりましたよ。

電源は5Vが供給できれば良いので、モバイルバッテリーでOK。
ログはRaspberry Piに保存されるので、長時間の取得も可能。

なによりも大幅に軽量化されたので、ぽいっとカバンの中に放り込んで、あっちこっちのCO2濃度を計測しやすくなりました。

そして思わぬメリットとして...

Jul 2 19:47:14 raspberrypi co2mini.pl[803]: Co2 = 6536 ppm, Temp = 24.91 degC
Jul 2 19:48:14 raspberrypi co2mini.pl[803]: Co2 = 6518 ppm, Temp = 24.91 degC
Jul 2 19:48:29 raspberrypi co2mini.pl[803]: Co2 = 6518 ppm, Temp = 24.85 degC
Jul 2 19:48:44 raspberrypi co2mini.pl[803]: Co2 = 6529 ppm, Temp = 24.91 degC
Jul 2 19:48:59 raspberrypi co2mini.pl[803]: Co2 = 6542 ppm, Temp = 24.91 degC
Jul 2 19:49:14 raspberrypi co2mini.pl[803]: Co2 = 6557 ppm, Temp = 24.91 degC
Jul 2 19:49:29 raspberrypi co2mini.pl[803]: Co2 = 6528 ppm, Temp = 24.98 degC

2,900ppm以上の値を取得することができるようになりました!

結構とんでもない値が出ていますが、これがどこの値なのかはこの後おいおい。

さぁて、測りまくるぞ!

二酸化炭素を吐き出して あの子が呼吸をしているよ

曇天模様の空の下。日々の暮らしの中で、いったいどれだけの二酸化炭素濃度に囲まれているかを解き明かしてみたいと思いますが、ここで私の基本的なスペックをご紹介しますね。

  • 会社員。男の大厄満了済(死にかけたけど)。
  • 築20年強の木造家屋に家族と共に居住。自室あり。寝室は自室と別にあり。
  • 通勤は電車とバスで片道1時間弱。
  • 自家用車あり。
  • 2020年4月より在宅テレワーク中。

中年サラリーマンとしては、そんなに特異でもなく普通のスペックかなって思います。

さて、こんな人間はどんな二酸化炭素濃度に暴露されて過ごしているでしょうか!

あるサラリーマンの平日

CO2Mini+Raspberry Pi+モバイルバッテリーの組み合わせで、おはようからお休みまでならぬ、前日寝るところから翌日寝るまでの24時間を記録してみました。

就寝中は枕元に置き、通勤中はビジネスバッグの外に露出する形でセット、勤務中は会社のデスク脇に置き、帰宅してからはリビングルームに置いて、1日ずっとなるべく私の身の近くに置いておくようにして計測した値がこちら。

時期は6月初旬です。

0時から7時までの上昇は、睡眠中の寝室ですね。1,000ppmから始まって、朝までの間に3,000ppmまで上昇していました。
先の3月の場合には朝まで2,000ppm弱までの上昇でしたから、それに比べるとだいぶ多いですね。夜間の気温が3月の頃のそれと比べて高い(3月は10度前後、今回は25度前後)ので、そのせいでしょうか?

その後ぎゅっと落ちてるのは家を出てから駅までの徒歩。ここは屋外なので400~500ppmです。

続く7:30~8:00頃までの急激な上昇は、電車に乗っている時間帯。
都心の満員電車なので、まぁ覚悟はしていましたが5,000ppm超え。ピークは5,453ppmで、これは職場の最寄り駅に降りる直前。
職場の最寄り駅は山手線沿線の駅です。駅でドアが開いて人の乗り降りはあるものの、そこで行われる換気よりも中に乗っている人が吐き出す二酸化炭素のほうが上回っているってことでしょう。

ちなみに自宅最寄り駅から職場最寄り駅までは乗り換えが1回ありますが、乗り換え時間も短いのでグラフには表れてませんね。

そこからは職場です。さすがに1,000ppm未満をキープしている快適な環境。
ビル管理人さんありがとう。

ちょっと面白いのが、定時後の空調が切れたタイミングで1,000ppm程度まで微増している点。この時間帯になるとオフィスの中に残っている人の数も少ないので、たとえ空調が止まったとしても急騰し続けることはないのかな。それか、温度キープのための空調とはまた別に、換気の空調は弱いながらもずっと動いているのかも。
何にせよ、オフィスビルの空気環境は大変よろしいものであることが分かりました。さすがです。

そして22時前に退勤(我ながらひどい生活だ...)。
駅まで歩いて(グラフが下がる)、電車に乗って(さすがにこの時間は空いているので1,500ppm止まり)、家に帰ったところグラフは終了です。

これを見ると、一日の大半を過ごすオフィス環境は大変良い環境に保たれているな、ということと、朝の通勤ラッシュの車中は予想通り大変なことになってるってことが分かりました。
先に紹介した実験では、マスクしていると吸気CO2濃度が4,000ppm程度嵩上げされるという計算でしたが、朝の通勤電車でマスクしていると、夢の10,000ppm台に突入してしまうのでは...と恐怖。
10,000ppm超えたあたりから不快感を感じるようなので、致し方なくマスクをせざるを得ない場合は、あまり長時間つけっぱなしにするのは避けましょうかね...朝から気分悪くなりたくないし。

以上、ある中年サラリーマンの平日でした。
続いて、ある中年サラリーマンの休日をお送りします。

自家用車の車内環境

自宅近くで何でも揃い、また公共交通機関が発達している都心部とは違い、都心から少し離れた環境で家庭を持つと、やっぱり自家用車があると便利です。
我が家も例にもれず、小型車ですが自家用車を1台保有してまして、休日は家族連れで出かけたりしてます。
最近は子供たちも大きくなって、なかなか親父の相手してくれなくなり、一人でのお出かけが多いですが....

さて、それはともかく、自家用車内は狭い閉鎖空間であり、その中に複数の二酸化炭素発生源がある環境。放っておくと満員の通勤電車ばりの高濃度CO2空間になりえます。

通勤電車と違い、自家用車の場合にはすべてのコントロールが自分で行えます。
このうちCO2濃度に影響を与えるパラメーターとしては、①乗車人数 ②換気の有無 こんな感じでしょうか。

換気に関しては、窓ガラスを開ける方法と、エアコンで内気循環モードをON/OFFする方法がありますが、今回は窓は締め切って内気循環のON/OFFで比較しました。

内気循環って知ってます?車のエアコン操作パネルにこんなスイッチありませんか?

これがONになっていると、外気の取り込みをやめて室内の空気だけを使ってエアコンの温度調整を行います。
また逆にOFFになっていると、走行中に外気を取り入れます(外気導入)。

で、これらを変えて値を採取した結果は以下の通り。
横軸は出発からの経過時間(時:分)です。
いずれも関東の市街地走行で、時期は6月~7月。目的地に到着するまでを計測単位としました。

各パターンで走行時間が異なるのはご容赦を。
なかなか長時間走りっぱなしの機会って無くてですね....

それはさておき、結果を見ると一目瞭然ですね。
車内に二酸化炭素の排出源が多いほど、グラフの傾きは急峻です。

先に紹介した実験データから、集中力の低下や眠気・倦怠感が増加し始める3,000ppmラインは、おとな2人が乗車している状態だと10分程度で突破。
1人乗車の場合は粘るものの、それでも30分ぐらいで突破しちゃいました。

真夏や真冬の高速道路のように、窓を閉め切った状態でエアコンをガンガンに利かせて長時間運転し続ける環境の場合は、意識的に換気しないと知らず知らずのうちに判断力が落ちた状態で車を運転し続けることになってしまいます。

特に、一般のご家庭で高速道路に乗るときってのは、行楽地に行く際や帰省時など、わりと家族総出で行く場合でしょうから、傾きはこれ以上に急峻になることが容易に想像できます。

こまめな休憩だけでなく、車内の換気にも十分気を配らないといけません。

さてその換気ですが、エアコンを外気導入モードにして走行した結果が緑のライン。
これは、1,500ppm前後を何とか維持していますね。素晴らしい。

自動車メーカーがそこまで考えて設計したかは定かではありませんが、密閉空間ともなる車内のCO2濃度の低減(上昇抑制)には、この外気導入モードはかなり効果があると言えるでしょう。

長距離走行時だけでなく、普段から外気導入モードで走行したほうがよさそうです。
また蒸し返しますが、マスクを付けての運転は吸気CO2濃度の観点においては、避けたほうが良いですね。

ちなみに、あのJAFもこの外気導入モードと内気循環モードにおけるCO2濃度の比較実験を行っていますが、同様の結果となっていました。こちらにその記事がありますので併せて御覧あれ。
このJAFの実験は4名乗車状態での測定ですが、そりゃもうえらい勢いで濃度が上昇していましたよ。

休日の現場からは以上です!
平日の現場にお返しします!

テレワーク時の室内環境

COVID-19対策で、日本は近代史上稀に見る国家的危機。
街から人の姿が消え、家の中に親も子供もみんないる、そんな日々が続いています。

私も4月からずっと自宅でテレワーク。
対面での仕事に比べると、どうしても効率の面では劣ることに加え、ちょっとした打ち合わせもテレカンファレンスになるので、1日中打ち合わせラッシュ。
ちょっと休憩で席を外すこともままならず、びっちり自室に籠りっぱなしの毎日です。

打ち合わせ続きで手を離せないので、リビングにいる家族に「お茶持ってきて~」ってLINEしてみたり、Bluetoothヘッドセット付けて打ち合わせしながら家の中をウロウロする始末。なんだこれ。

さてそんなテレワーク、近代文学の文豪ばりに伊豆や箱根や熱海の温泉宿に籠るようなステキなお籠りならいざ知らず(真面目に、そんな宿泊プランあったら本当に1か月程度温泉宿に籠るよ!)、自宅の6畳間にほぼセルフ監禁状態。
こんな状態の室内空気環境、どんなことになっちゃってるでしょうか!

いざ尋常に!

自室の外窓・出入り口の扉共に締め切った状態で、意図的に密閉空間を作っての計測です。
前述の通り、我が家は24時間換気システム未導入の住宅のため、窓・扉ともに閉めた室内の換気はすきま風(漏気)に依存する、そんな状態です。

これを見ると、1日を通して2,000ppm未満には収まってますね。
24時間換気システムなしの部屋でこうなので、換気システム有りの家では全然問題ないんじゃないでしょうか?

私の自室の場合、昼食で居室内に人がいなくなると、500ppm/h のペースでCO2濃度の減少がみられるので、500ppm/h 分の隙間風換気が備わってるという感じですかね。

本当かなぁ...

定時のタイミングで、いったんリセット。部屋にいる状態を維持しつつ、部屋の扉を10cm程度開けて(でも外窓は閉めたまま)みましたら、おお、ぐんぐん下がる。少しだけでも扉は開けておいたほうが換気されるんですね。

その後にまた上昇に転じているのは、ちょっと不明。特に扉の開け閉め具合を変えたわけでもないのですけどね。

とは言え、見た感じ居室空間内の二酸化炭素濃度は、意思決定能力に重篤な悪影響を与えはじめるレベルとなる2,000ppm以上にまではギリギリ至ってはいなそうなことが分かりました。

ということは、仕事が捗らないのは別の原因ですね。えへ。

サンプルは1日だけで物足りないので、もう1日、今度は少し条件を変えてみました。

この日は天気が良かったので、部屋の窓と扉をそれぞれ5cm程度開けて、風が通る状態にして勤務開始。
といっても、風が吹いていると分かる程の風通しではなく、ほんの僅かに、あ、風吹いているかもなと分かる程度の風の強さです。

結果は以下の通り。
今回は室温の値もプロットしてみました。

いい天気過ぎて午後から室温30度を超えてしまい、ついに我慢できずクーラーを入れてしまいましたが、風通しをしていた午前中はほぼCO2濃度に差はなく、屋外とほぼ同じ500ppm前後を維持しています。

風通し、効果大!

クーラーをONにしたタイミングで窓は閉めましたが、扉は5cm程度の隙間を維持。
さすがに濃度上昇は避けられないものの、それでも定時内は1,000ppm未満をキープしています。

17時頃からの気温とCO2濃度の上昇は何だろう?
この時間帯になると、日も傾き、外気温もだいぶ下がり、クーラーもほぼ止まっていたころ。もしかすると室内外の気温差が縮まり対流がなくなったことで、扉の隙間を使っての換気が弱まってきたのかな?と推測します。

目に見えないものですが、こうして可視化してみるとやっぱり面白いですね。
諸君、やはり私はセンサーが大好きだ。

もう1日。今度は終日、窓と扉を2~3cm程度開けて過ごしてみました。

同じくいい天気で暑かったのでクーラー入れてますが、窓や扉は閉めず、開けたままでクーラーONです。
ちょっとしか窓開けてなかったので、効果あるのか心配でしたが、ばっちり効果出てますね。終日で1,000ppm未満に収まっています。

わずかながらでも、窓を開けて換気することは効果があることが分かりました。

今は大人だけでなく、小学生から大学生まで、ずっと家に居てリモート学習していると思います。
年頃のお子様を持つご家庭の場合、子供部屋へのアポなし訪問は死に至る危険性をもはらみますが、日々のご家庭の会話の中で、子供部屋の換気の重要さを説くようにしましょう。

子供たちの快適な生活をアシストするのも親の務めってもんです。

まとめ

ということで、まとめです。

  • 居室内の二酸化炭素濃度の上昇は、意思決定能力などの知的活動に対して悪影響を与える。
  • 研究・実験結果から、2,000ppmぐらいから悪影響が出始め、3,000ppmぐらいまで行くと1,000ppm時の半分近くのパフォーマンスにまで落ちる。
  • マスク装着しているときの吸気は5,000ppm程度の高濃度CO2環境に匹敵。
  • 会社のオフィスはかなり快適な空気空間が保たれている。
  • 車に乗るときは外気導入モードにせよ。
  • テレワークで閉め切った自室に1日籠っても、パフォーマンスに影響を及ぼすほどのCO2濃度にはならない。
  • とは言え少しでも窓と扉開けて風通しすると劇的にCO2濃度は下がる
  • 湯河原の温泉宿で海を見ながらテレワークしたい。

事態の一日も早い収束→終息を願いつつ、現場からは以上です!
またお会いしましょう!

参考文献