世はまさに不景気まっただ中。
お金にまつわる黒い話がニュースを始めそこかしこから聞こえてきます。


特に年末年始になると急増するのが詐欺の話。
世の中うまい話は無いのに、うっかりお金を支払ったり振り込んじゃったりする人は後を絶たないようです。


幸いにも自分はお世話になったことはありませんが、知識として知っておくと良いのが「組み戻し」なる手続き。
これは、一旦振り込んだお金を何らかの理由により「ごめんやっぱ返して」という場合に行う手続きのことで、いくばくかの手数料(600円~1000円弱)を支払うことで、既に振込先の口座へ振り込まれたお金を指定の口座に戻してくれるようお願いすることができる手続きのことです。


下線を引いた事からも分かるとおり、組み戻し手続きをしたからといって、必ずお金が返ってくるとは限りません。

何故ならば、一旦相手の口座に入金されたお金は入金された時点で相手のものであり、それを勝手に組み戻す(移動する)訳にはいかないからです。それをやると泥棒になってしまいます。
そのため、組み戻しを行うには、入金先の口座所有者による組み戻し同意手続きが必要になります。


「同意手続き」とあるように、強制力を伴うわけではありません。
組み戻しに同意したくない場合は拒否することも可能です。


この同意手続きこそが、上で述べた「必ずお金が返ってくるとは限らない」理由になります。
最初っから騙し取ってやる気満々の相手に対して組み戻し手続きの依頼をしたところで、果たして同意してくれるでしょうか?
自明ですね。

詐欺や架空請求などで、「振り込んでしまったお金を取り戻すにはどうすればよいでしょう」等とYahoo知恵袋やOKwaveへ相談している人を見かけます。
その際のテンプレート的な回答として、この組み戻し手続きが挙げられていますが、「あまり期待は出来ませんが...」的な説明も併記してあるのは、上記の理由によるものです。

なお、組み戻し手続き自体は、本来は「間違った相手に振り込んでしまった」という、言うなれば「誤爆」してしまった際に行われる手続きです。
したがって、詐欺の被害に遭うといった、のっぴきならないケースではなくとも、お金を振り込む機会がある人で、かつ、注意力散漫なうっかりさんの場合は、もしかしたらこの組み戻し手続きのお世話になる可能性があるかもしれません。

また、誤爆をされる立場になる可能性は、銀行口座を持っている限り誰にでも存在し得ます。

つまり、誰にでもこの組み戻しのお世話になる可能性があるわけです。
そう言う意味では、知っておいて損のない知識でしょう。





さて、いつもと変わらない忙しい日々。
ある日それは突然やってきました。



アスファルトタイヤを切りつけながら暗闇走り抜ける1通のメール。







この時点で私は組み戻し手続きなるものの存在と内容を知っていましたので、メールを見ただけでは「何この怪しいメール(((( ;゚Д゚))))」となることはありませんでした。

しかし先にも述べたように、この組み戻し手続きの依頼があると言うことは、

  • 振込先を間違えて入金しちゃった「うっかりさん」の仕業


以外にも、

  • 私、もしくは振り込み人(ないしはその両方)が、なにがしかの良からぬ事案に巻き込まれた可能性

ということも考えられます。

前者であれば /(^o^)\ナンテコッタイ で済むでしょうが、後者であれば (((( ;゚Д゚))))ガクガクブルブル です。

もし誰かが俺をハメようとしてこんな手の込んだことをしたとすれば、こっちにしてみれば全く心当たりは無いわけで、言うなれば見えない相手との戦いです。
でも相手は俺のことを知ってます

これはマジ恐ろしい! ヒィー(((゚Д゚)))


いや冗談抜きで

このときの俺こんな感じ。
チープなスリルに身を任せても明日に怯えまくりです。

ともあれ、そのような入金があるかどうか確認してみることにします。
口座管理ソフトを起動し、該当日の取引明細を取得してみると...




どうやら本当に組み戻し手続きが必要な事態のようです。

数日後、組み戻し手続きに必要な書類一式が届きました。

ちなみに速達でもなんでもない、普通郵便での到着です(笑)

中身はこんな感じ。

趣旨の説明レターと、組み戻し承諾書、本人確認書類例の3枚。それに返信用封筒。 詫びのクオカードとか入ってないか期待しましたが、流石にそれは無い様子(笑)

というかこの銀行にしてみれば振り込み人からの組み戻し手続きを取り次いでいるだけなので俺に詫びる義理は無い訳です。

むしろ書類の発送や余計な事務手続きが増えることになるので、とばっちりを受けた被害者仲間とも言えなくはないかもしれません。

そしてこちらが今回のキモとなる「振込金組戻承諾書」。
組み戻し依頼に対する意思表示を行う書類ですが、見ての通り、

とある通り、「組み戻しを拒否する」という選択肢も用意されています。

仮に詐欺師に対して組み戻し依頼をしたとしても、「承諾致しません」にチェック付けて返されたら、組み戻し手続きはそこでオシマイ。手続きとしても正常終了です。

なお今回のケースはネット系銀行からの組み戻し依頼だったため届け印は不要になっていますが、通常の銀行からの組み戻し依頼の場合は、銀行届け印が必要になるようです。

また未確認情報ですが、恐らく本人確認のためでしょうか、本人がわざわざ銀行窓口までハンコ持って出向いた上で、この組み戻し承諾手続きの書類を書く必要がある銀行もあるようです。

だぁー!めんどくせーーー!

平日真っ昼間に、何処の誰とも知らないヤツのために、会社を中抜けした上に面倒な手続きをしなければならんとは、迷惑千万!しかも無償で!

そうでなかっただけでもマシと思うべきか...いやいや現状十分迷惑だろ常識的に考えて...。

また、本人確認書類を必ず同封くださいとの記載もある通り、なにがしかの本人確認書類を用意しなくてはいけません。

具体的には、

  • 運転免許書のコピー
  • 印鑑証明書の原本
  • 住民票の写しの原本
  • 外国人登録原票記載事項証明書の原本

の何れかを本人確認書類として同封するようにとのこと。
ちなみに私が居住する行政区の場合、それぞれを取得するのに

  • 運転免許書のコピー → コンビニでのコピー代10円
  • 印鑑証明書の原本 → 1通300円
  • 住民票の写しの原本 → 1通300円
  • 外国人登録原票記載事項証明書の原本 → 1通300円

という費用がかかります。

何処の誰だか分からない奴のために身銭を切るとは誠に許し難いですが、やむを得ません。
組み戻し依頼手続きを無視してネコババしてしまえば、今度は私が罪に問われて10円だの300円だの言ってられない事態に発展してしまいます。

当然一番安い運転免許書のコピー(10円)を選択です。
運転免許を持ってない人はそれ以外の書類が必要になるわけで、その場合は300円の無駄出費が強制されます。

さて今回のケースの場合、どういう理由で組み戻しに至ったかの確認がまだです。
組み戻しの手続きというか連絡は、

  1. 振り込んだ人
     ↑
     ↓
  2. 振り込んだ人の口座を持つ銀行
     ↑
     ↓
  3. 振込先の口座を持つ銀行(今回書類を送ってきた銀行)
     ↑
     ↓
  4. 振込先の口座を持つ人(私)

というルートで行われます。

組み戻しの理由について、もしかすると上記1-2間で説明が行われているかも知れません。
そしてその情報が2-3間で連携されていれば、私が3へ問い合わせをすれば、もしかすると教えてもらえるかも知れません。

とりわけ、何やら良からぬ事態に起因しての組み戻しであれば、銀行側も同種の事象について再発防止のための警戒態勢を敷いているでしょうし、だとすれば何かしらの情報を持っていて教えてくれる事が期待されます。

もうね、一刻も早くこの気持ち悪い状態を脱したいのよ ( ´Д⊂ヽ
その一心で、上記3のカスタマーセンターへ電話問い合わせを敢行!

....が、めぼしい収穫は無し……

情報を持ってないんだか、それとも単なる誤振り込みなのかが判別つかない、なんとも消化不良な結果に。。。

駄目元で、本人確認書類の用意に掛かった費用はこれ持ち出しですかと聞いてみたところ、やはり銀行側としては補償は行っていないとのこと。さいですか...

これ以上粘ってもしょうがないので、さっさと手続きを済ませてしまってさっさと青春の一ページへ押しやることにしました。
組み戻しに承諾する旨チェックを付け、運転免許のコピーを同封し、ポストへ投函。
ええいこの忌々しい21万8千8百円よ、さっさと俺の元から去りやがれ!

そして平穏な日々よ、早く帰ってこい!( ´Д⊂ヽ

数日後。

降って沸いた貰い事故状態での組み戻し承諾手続き体験でしたが、ネットを検索してみても組み戻し依頼を「行う」側の体験記はありますが、組み戻し依頼を「受ける」側の体験記は無いようです。

組み戻し手続きを受ける側がどんな気持ちでどんな手続きを行うかの参考になれば幸いです。

振り込み間違いを起こし、組み戻し手続きを依頼すると言うことは、ここで紹介したように、見ず知らずの第三者に対して多大な迷惑や心労を掛けることになります。
銀行振り込みを行う際は、くれぐれも振り込み間違いをしないよう、十分に相手の振込先口座と氏名を確認した上で振り込んでください。

今回は、私のような善良な市民だったからいいようなものの、これが「は?勝手に振り込んだ奴が悪いし」という主義主張の持ち主だった場合は組み戻しを拒否する場合もあり得ます。
そうなった場合の対応はとても煩雑になり、また長期化することが予想されます。
場合によっては弁護士などの費用もかかることでしょう。

また、上記のような場合ではなくとも、例えば引っ越した後住所変更の手続きを行っていたかったために、銀行から口座名義人に連絡を取ることができない場合は、そもそもこの組み戻し依頼すらできない状態になります。
この場合もまた対応が煩雑で長期化することが十分に予想されます。

実際、私も学生時代に作った銀行口座のうちいくつかは住所変更せず昔の住所のままになっているものがあります。
それらは現在は一切使っていない、休眠状態の口座です。
したがって、記帳すらしていないので、謎の入金があったとしても気付くことはありません。

もしこの口座宛に誤爆しちゃったとしたら、どうなったでしょうか??


なので、送金先の確認はくれぐれも慎重に。


ちなみに私はこの後この口座を解約しました。
この一件、事件性はなさそうに感じましたが、やはり万が一の事があると気分悪いですし、また同じ事があるのは御免ですから。


引き落とし口座を変更して回るのがめっちゃ面倒でしたがね!
ああああああもう!!!めんどくせええええええ!!!!!


後日談:



もしかすると一連のお詫びを言いたかったのかも知れませんが、ただでさえ良からぬ事に巻き込まれたんじゃ無かろうかとビクビクしてる時に「連絡取りたい」「連絡先教えろ」などと言われた日にゃ、「こりゃやっぱり何かの罠だったんだ!」と警戒レベルはレッドゾーンへ急上昇です。

レッドゾーンってどの程度かというと、身辺警護を真剣に考え出すレベルです。

あの、お礼だの詫びだのは要らないんで、そっとしておいてください。
ホント、静かに暮らしていたいだけなんで。
どうぞ宜しくお願い致します。