2007年12月


「工場萌え」が流行っています。
世間一般的に流行っているかどうかはさておき、私の中で流行っています。


丁度良いことに、日本屈指の工業地帯である川崎工場地帯がすぐ近くなので、カメラとレンズセットと三脚を持っては見学しつつ写真を撮ってみたりしています。


工場地帯というと、臭いだの騒音が凄いだの、あまり良いイメージが無いと思いますが、夜になると華やかな都心部の夜景を凌駕するほどの夜景を楽しむことができるのですよ。


工場地帯の夜景の魅力は、プラント群の機能美に尽きます。
ウネウネと曲がりくねるパイプ群、縦横無尽に走り回るケーブルやフレームパイプ、そしてそびえ立つ煙突。
それらをあくまでも機能的にライトアップする照明。


誰かに見せるためではなく、単純に機能と保守メンテナンスの効率性を追求した結果でしかないその佇まい。
しかしそれが結果としては美しい機能美として形になっている。

それが工場地帯の、そしてその夜景の魅力です。




例によって前置きが長いですが、その魅力を是非知って頂きたく、これまでに撮影した写真をいくつか紹介致します。



題して....




川崎工場地帯 NightShot 2007
Winter Collection




ということで、例によって こちらにまとめましたのでご覧くださいませ。

ブラウザのウインドウは最大化して鑑賞されることをオススメします。

そしてもしお気に召されたら、次はぜひご自身の目でお楽しみいただくことをお勧めします。
迫力が違いますよ!











(以下写真好きな人向けの話題)


今回の撮影にはRICOHのコンパクトデジタルカメラ Caplio GX8と、Canonのデジタル一眼レフカメラ EOS Kiss Digital X(以下KDX) を使用したのですが、例によって夜景撮影時特有の現象に悩まされました。


まずひとつは電池の持ち。


夜景撮影なので、当然三脚にセットした状態でシャッターを切ります。
さらに、ある程度シャープな像が欲しいので若干絞り込んで撮影します。
加えて、三脚にセットしている為手ぶれを気にする必要がないので、ISO感度も限界まで落として撮影します。
とどめに、プラント照明の点光源により露出がアンダー気味に引っ張られるので、0.7〜1.3EV程度のプラス補正をかけて撮影をします。

そうなると必然的にシャッタースピードが落ちます。
例えばCaplioGX8の場合はISO64まで感度を落とせるので、この状態で照明バリバリに当たっているプラントを間近で撮影したとしても、F8程度まで絞ったらシャッタースピードは30秒とかになってしまいます。
これはKDXも同じ。


そんな状態で何枚も何枚も撮っていると、電池があっという間に無くなってしまいます。
デジタル一眼レフカメラであればミラーアップ+CCD稼動時間が通常撮影時とは桁外れに長くなりますので、その分電池の消耗度合いも桁外れになります。


だいたい1回の撮影で100枚近く撮ってくるのですが、その場合はバッテリーは1本では持つか持たないかという状態です。
これはGX8のようなコンデジでも同じです。


また今のように寒い時期の場合はただでさえ電池の持ちが悪くなります。
私のように、思い立ったらすぐ撮りに行ける人間ならいいのですが、すこし離れたところにお住まいで、見に行くのも撮りに行くのも気合を入れて行く必要があるような場合は、カメラのバッテリー切れにはくれぐれもお気をつけください。



次に交換レンズについて。


これはデジタル一眼特有の問題です。
また、フイルムの頃から一眼レフカメラを使い続けていて、そこそレンズ資産がある人は特に要注意かと思います。


デジタル一眼レフカメラの優位点の一つとして、これまでのフイルム一眼レフカメラ時代からのレンズ資産をそのまま使えることが挙げられます。

たとえば私の場合はミノルタのフイルム一眼レフカメラを使っているので、旧コニカミノルタのデジ一眼やSONYのデジ一眼を使う場合は今持っている交換レンズをそのまま使用することができます。


KDXの場合はCanon EFマウントなので、フイルム一眼レフカメラ時代のレンズも含めてEOSシリーズ用にリリースされたすべてのレンズを使うことができます。


一見よさそうに見えますが、本当にそうでしょうか?



フイルムカメラとデジタルカメラの大きな違いがひとつあります。

デジタルカメラの場合、フイルムカメラのフイルムに相当する部分はCCD、あるいはC-MOSセンサーといった撮影素子になります。
この撮影素子が曲者で、フイルムとは異なり表面の平滑度が桁違いに高いため、レンズの最後群との間で光の反射が生じてしまう現象が発生してしまいます。


「デジタルカメラ用」として市販されている交換レンズについては、レンズの筒の部分やレンズ自体のコーティングに工夫を凝らすなどしてこの現象を回避していますが、では、フイルム時代の交換レンズについてはどうでしょう?



これが何を意味するかというと、

    「デジタル一眼レフカメラ用」の交換レンズは、撮影素子による光の反射に対抗するようなコーティング等の対策がなされているが、フイルム時代のレンズはそのような対策はなされていないので、何かしら問題が起きる可能性がある

ということです。


具体的な例を見てみましょう。


今回比較対象として取り上げたレンズは以下の2本。

  • デジタル対応:タムロンA18(AF18-250mm f/3.5-6.3 Di II LD Aspherical [IF] Macro)
  • デジタル非対応:Canon EF 50mm f1.8 II

それぞれ、

  • 旅行用お手軽ズーム。軽いKDXとコイツのセットはお手軽旅行写真最強セット。
  • 1万円でお釣りが来る爆安標準レンズ。別名、「キヤノンの撒き餌」(笑)

として重宝するレンズです。

このそれぞれで同じアングル・画角・絞り値で撮影してみた結果がこちら。


↑タムロンA18 15Sec F8.0 絞り優先AE ISO200


↑Canon EF 50mm f1.8 II 20Sec F8.0 絞り優先AE ISO200




リサイズしているので分かり辛いかもしれませんが、EF50mmで撮影した写真の中央部分には紫色のゴーストが盛大に出ています。



これはこの写真に限らず他の写真でも出ていました。

↑Canon EF 50mm f1.8 II 2.0Sec F9.0 絞り優先AE ISO200


いかに1万円でお釣りが来る値段で買える激安レンズとはいえ、さすがは単焦点レンズ。解像度の高さはお手軽ズームレンズの比ではありません。
それだけに、このゴーストは非常に惜しいです。



レンズによってはバリっと絞り込むことで消える物もありますが、だからといって絞りに絞ると今度は回折現象という、いわゆる「小絞りぼけ」が起きてしまい、それはそれで困ったことになってしまいます。



このように、フイルム時代のレンズをデジタル一眼レフカメラに装着して使用することは可能ですが、撮影対象によってはデジタル一眼特有の問題が露わになることを念頭に置いて機材選定を行う必要があります。

特に工場地帯に限らず夜景の撮影は、点光源が豊富ですのでレンズの特性によるゴーストの発生については事前に確認を行っておく必要があります。

現地で液晶モニタをのぞき込んでは「くそー消えないなあー!」と言いながら絞りをコリコリ調整しては撮影を繰り返していると、前述の通り電池があっという間に無くなってしまいますので特に注意です。
(場所と格好と挙動によっては不審者扱いされる危険性も...?)





ところで、これと同じ原因(デジタル対応コーティングの有無)かは分かりませんが、このEF50mmF1.8IIはデジタル一眼レフカメラと組み合わせて使用する場合はちょっと注意が必要なレンズかも知れません。

その安さと開放F値の小ささに惹かれて買ってみたのですが、絞り開放に近い状態で明るい被写体(特に、光の反射率が高そうな白い被写体)を撮影すると、画面全体に盛大にフレアが出てきてしまいます。



作例。

↑Canon EF50mm f1.8II 1/4000Sec F1.8 絞り優先AE ISO100


↑等倍表示



1枚目は縮小したので分かり辛いと思いますが、全体的にピンぼけっぽい写真になってしまっています。


が、ピクセル等倍で見てみると、これはピンぼけではなく、ピントは来ているけど、全体的にソフトフォーカスっぽく写っていることが分かります。
最初にこの写真を見たときにはかなりビビりました。


このフレアは絞ってあげると徐々に消えていきます。

↑Canon EF50mm f1.8II 1/2000Sec F2.8 絞り優先AE ISO100


↑等倍表示


絞れば消えるとはいえ、せっかくの明るいレンズ、開放F1.8を使えないのはちょっと残念です。
少し暗めの室内でもノーフラッシュで撮影できるのは大きな強みだったのですが...(絞り開放でフレアが盛大に出るのは室内撮影でも同じ)

なおこの盛大なフレアは、10枚近く同条件で撮影した全てのカットで確認されました。
したがって、「たまたまそうなった」という訳ではなく、これがこのレンズの実力だと思われます。



かたやデジタル対応レンズの場合はどうかというと、


↑タムロンA18 1/3200Sec F5.0(開放) 55mm域 絞り優先AE ISO100


↑等倍表示




お手軽高倍率ズームレンズなので開放F値が暗い上に解像度は単焦点レンズには勝てないでしょうが、それでも絞り開放でこの描写なら個人的には許せる範囲です。





ちなみにこのテスト撮影の後、上記の通り解放時の描写があまりにもヤバい状態なので、カメラかレンズが壊れてるんじゃないかと思い、レンズとカメラをを持って新宿のキヤノンクイックリペアセンターへ行って調べてもらいました。

結局QRセンターでは分からず工場送りになりましたが、結果としては異常なしで帰ってきてしまったので、やはりこの結果はレンズの実力だということになります。
どこか壊れていたせいでこの描写だったら良かったのですが.....


もちろん、フイルムカメラ用に作られた全てのレンズがこうだとは思いません。
むしろこのEF50mmf1.8IIに特有の問題だと思いたい!ですが、デジタル対応と明に謳っていないレンズを使用する際には、このような描写になる可能性はやはり捨てきれないなあというのが最終的な感想です。
(比較対象は上記EF50mmf1.8IIの1本だけなのでこの結論は間違っている可能性もありますよ)


できれば現行レンズ群を徐々にデジタル対応にシフトしていって欲しい。
もしくは、カメラ側の対処で非デジタル対応レンズでも問題のない描写ができるようになって欲しい!

やはりなんと言っても単焦点レンズの描写は素晴らしいですからね。




追記

ついでにEF50mm f1.8でもう1点。

開放f1.8という明るいレンズなので室内撮影に使うと、今度はなかなかピントが来ない...

↑EF50mm f1.8 1/80sec F2.2 絞り優先AE ISO800


↑拡大表示(等倍ではない)
 ピントはキーボードに合わせたのに、後ピンで後ろの電話にピントが来てしまっている。


これはカメラ側のAFセンサーの問題か、それともレンズの問題か...?

もともと大口径レンズでピントの合う範囲が薄い上に、かつ、APS-Cサイズのデジタル一眼では35mm換算で75mmという中望遠レンズ級になってしまうので余計にピントの合う範囲が狭いってのもあると思いますが、流石に如何な物かと...



と思ってたら、近接撮影時(80cm未満)の後ピン癖は有名みたいですね。
どの程度の物か、丸リーマーの先端部分にAF合焦ポイントを合わせて再度撮影。


↑ 1/60sec F1.8 絞り優先AE ISO100


↑ 拡大表示


あれ、特に問題は無さそう(フレアは出てますが)。
撮影対象やタイミングによるのか?


何にせよ、一筋縄ではいかせてくれない暴れ馬レンズのようです。やれやれ。




※注※

このページの内容は、別に専門家でも何でもないその辺の兄ちゃんが憶測混じりに書いているものです。
「違うよ!全然違うよ!」というご指摘などあれば、どこかでそっと教えて頂けると幸いです。



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