2004年6月


それは突然やってきた。


ある日家に帰ると、何か部屋がクサイ。
クサイといっても生ゴミ臭ではなく、溶剤系の臭さ。ケミカル臭。

また川崎の工場地帯のクサい煙が風に乗って飛んできたのかいな..と思ったが、家の外は至って普通。家の中だけがクサい。


「さては、昼間だけ風がこっちに吹いていて、その時の匂いが部屋の中に留まっているんだな」


そう考え、部屋中の窓を開け換気をし、遅めの夕食を取る。
だが、どうもいつもとは匂いが違う。そこはかとなく危険な感じだ。嫌な胸騒ぎがする。



そこへ嫁さん帰宅。
夕食の冷やし中華をほおばったまま「この部屋クサくない?」と聞くと、あきれた顔で「うんクサイね」との返事。
屁でもこいたのかと言わんばかりの顔だが、俺の気のせいでは無いことが分かった。


嫁さんも、昼間と今とで風向きが違ったせいで、部屋の中にクサイ香りがこもったままになったんだろうという意見だった。





しばらく部屋の窓を全開にしておいたせいで、随分と匂いは取れた。
と同時に、食欲が満たされた俺は自室に行き一服することにした。









.......ん?
この部屋だけまだ匂いが残っているな...
ちゃんと窓全開にしているのに。

いや待て。



もしかしてこの匂いの犯人はこの部屋の中の何かか?





先日のコンデンサ騒ぎもあり、特にパソコン周辺を嗅ぎ回ってみた。が、特に怪しい香りは感じ取れず。





換気がうまくいかず、吹き溜まっているのかな。
まあ、あとしばらく換気しておけば大丈夫だろう。
そう思って俺は風呂に入ることにした。





風呂に入りながらも何か思い当たるものは無いか考えてみた。
部屋の中にあるもので、特に常時電源が入っているものをひとつひとつ思い出してみる。


パソコンは先日のコンデンサ妊娠問題の際にケースを開けて目視確認&ホコリをエアダスタで飛ばしたりしたので、電源部にホコリ混入→ショートといったことは考えづらい。
また、AVアンプや無線機に関しては電源を入れていない上にハードウェア電源スイッチなので待機電流も流れない、よってシロであろう。とするとつい昨日、約1年ぶりに電源を入れたテレビか?いやいやそれなら電源を入れた瞬間にドカンと行くだろう。


もっと他にないか、常時電源が入っていて、逝くとケミカル系の香りを発しそうな化学物質満載のものは....



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   あった。








UPS(無停電電源装置)だ!!!!!!










超急ぎで風呂から上がり、部屋に戻る。
そしてUPSに手をかけてみると.....








超あちいいいいいいい!!!






コレはヤバイ。UPSのケースですら数秒触っているのがやっとの温度だ。
急いでUPSに接続されているサーバ類をシャットダウンし、UPSの電源をOFF。そして棚から引きずり出す。
ただでさえ重たくて動かすのが難儀な上に、焼きイモ並に熱せられたUPSの筐体。とても簡単には引きずり出せない。
さらに悪いことにUPSの上には雑誌や小物が積んである。どかすのも面倒になるほど乱雑に。

しかし今はそんなことを言っている場合ではない。ヤケドするか火事になるか、それとも爆発するかの瀬戸際である。積んであるものを投げ捨て、電源ケーブルをコンセントから引き抜き、UPSを必死で引っ張り出す。













この香り。






間違いない。















いったい何度あるというのだ。
デジタル温度計で恐る恐る温度を測ってみると....






ケース内温度74.6℃!!!



何だよこれ!真夏のボンネットかよお前は!

しかもこれはケース横の通気穴から、制御基板のあたりに温度計のセンサー部分を恐る恐る突っ込んで計った温度。
さらに温度センサーの位置をUPSの中心部に移動させてみると...







75.1℃ (((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブル




75.4℃ (((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブル







怖いほどヒートアップ。なんて言っている場合ではなく素で超コエー!!!!




そしていよいよ本丸。

メルトダウンを起こしている(と推測される)鉛電池が入っている電池室内に温度センサーを挿入し、室内温度を測定してみると....























82.1℃!!!! (゚ロ゚;;;;)


















コレはヤバイ。
超ヤバイ。
素で引いた。


ヘタすりゃこの中、死の灰降ってるぜ…………




しかし、意を決して電池室の金属フタを開ける。
フタは2本のプラスネジでネジ止めされているが、既にそのネジすらギンギンに熱い。素手で持てないほど熱い。


衝撃を与えないよう、恐る恐るゆっくりとフタを開ける。
するとそこには...












中央部がこんもりと盛り上がった鉛蓄電池が。


ふたつある電池のうち、左側が特に隆起著しい。
左右で見比べてみるとよく分かると思う。
これは決して光の反射ではなく、上蓋が隆起しているのだ。






該当部分のアップ。
噴火寸前といったところです。

実際、噴火直前の火山性ガスは出ていたし。
カナリヤ持っていったらきっと死ぬこれ。






別の角度からもう1枚。
電池のフタ部分接合部が熱でねじ曲がってます (((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブル











うっかり耐障害性を上げるつもりでいろんなギミックを凝らした結果、それ自体が障害の原因になるなんてことは良くある話(クラスタリング、マルチパス、スパニングツリー等..)ですが、人体に障害を与えちゃうのは本気で勘弁







電池だけ替えればまだ使えるかなというビンボくさい考えが一瞬よぎったものの、はした金ケチってサーバもろとも人生を shutdown -h now するほど悟りは開けてません。潔く丸ごと捨てることにしました。





しかし、UPSの内蔵バッテリーってどこで回収してくれるんだろう _| ̄|○

つか、新品のUPS買わなくちゃ...






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★補足★

    今回の原因は、通気性のあんまり良くない場所で、なおかつ賞味期限を過ぎて蓄電池を使い続けていたせいではないかと思われます。
    実際、このUPSは2000年頃に購入し、それ以来電池交換をしていませんでした。
    本来は約2年で無条件に電池交換をするものなのですが、電池ヘタってきたら何かしらアラーム表示でるべとタカをくくって安心しきっていたところ、このような事態を招いてしまいました。
    どうもこの電池はヘタってきたらアラームを上げるどころかむしろヘタっても老体にムチ打って頑張ってしまう個体だったらしく、死の直前になってようやく違う形でアラームを上げてくれました。つーか死にそうなら早く言えよテメ。


    いや、でも、旅行や出張で長期間家を空けているときじゃなくて本当〜〜〜〜に良かった。
    自宅にUPSをお持ちの方はお気を付けあれ。マジで。





後日談


バッテリーをUPS本体から引っ張り出してみました。


う...ボコボコじゃねえか...怖ぇ〜〜



シール部分がめくれてる!(((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブル
ここからガスが漏れたのね!



端子部分。
液漏れも起こしていたのか、端子部分が腐食していました。






おー、怖!
ヤフオク等で中古でUPS買った人、まだ充電できるからといって安心せず、電池は新品に交換して使いましょうね!



★補足2★

    こうなってしまった場合の内蔵電池の処分ですが、正規に購入したUPSの場合まずはメーカーに相談しましょう。まっとうなメーカーの場合は、何らかの方法(廃電池回収方法)が用意されています。

    問題なのは、

    • 廃電池の回収どころか電池の交換すら想定していないインディーズ系の投げっぱなしジャーマンUPSを買ってしまった場合
    • UPS自体のメーカーはしっかりしているものの、電池をうっかり秋月電池等に自前で交換してしまったが為に日陰者となってしまったUPSの場合(俺これ)

    など。この手の場合は、

    • 自治体で回収している場合はそれに従う
      →鉛蓄電池の回収をやっているところは少ないようです。お住まいの自治体で回収してくれるようなら感謝しましょう!

    • UPSや鉛蓄電池を売っている店に持ち込んでみる
      →要トーク力(俺これ)

    • ガソリンスタンドやバイク屋に持ち込み処分を依頼
      →何か買ったついでじゃないと頼みづらいが日本中で最も回収ルートが確立されておりオススメ

    等の方法で、まっとうに処分してください。
    処分は有料の場合が多いですが、高くても1個1000円ぐらいの模様です。


    また、UPS本体は粗大ゴミとして分別してきちんと捨てましょう。


    なお、野山や川にコソーリ置き去るのは文句なしの犯罪であり、比喩的表現ではなく人生をシャットダウンあるいはシングルユーザモードで終える危険性がありますので激しくお勧めしません。




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